浜名湖の浜納豆
浜名湖のほとり三ケ日に、室町時代から伝わるという納豆「浜納豆」という珍味があります。
納豆といっても、いわゆる糸引き納豆ではなく、ぽろぽろに乾いている山椒の皮の風味が利いたみその粒のようなもので、白いご飯の上にのせたりお茶漬けにしたりして食べるものです。(お酒の肴によいという話も・・・)
この「浜納豆」は保存性もよく、栄養もあるため戦国時代には兵糧にもなり、足利義勝や今川義元、豊臣秀吉などの武将などにも好まれ、特に徳川家康はこの「浜納豆」がお気に入りで、江戸幕府の歴代将軍に献上されていたとも伝えられています。
三ケ日町にある大福寺では、この浜納豆を室町時代からの方法で作り続けています。
作り方は、まず大豆を煮てからせいろでゆっくりと蒸します。それから荒熱をとった後、裸麦を炒って粉にした“香煎(こうせん)”をつけ、自然の麹菌がついている室に入れます。こうして1週間から10日おいて麹の花が咲いたところで塩水につけこみます。さらに2ヵ月半から3ヵ月も寝かせ、最後に天日で干してようやく完成するのです。
大福寺の浜納豆は山椒の皮と一緒につけるのが特徴で、他のお寺やお店でも浜納豆は作られていますが、しょうがや山椒の実を使うなど、各自特長を出しているそうです。
大福寺の浜納豆は、今でもご住職一家の手作りです。最初のひと樽分の大豆を炊くのが7月の初旬で、9月いっぱいまで間隔をあけて7樽を炊くのみ。最初の樽の納豆が出来上がるのが、10月中旬ごろの予定。これは天日干し過程がある関係でなんともいえません。
販売は、来年の4月いっぱいでだいたい終了となるそうです。この貴重な大福寺納豆、もし浜名湖は三ケ日の辺まで出かけることがあったらぜひ買ってみるといいと思います。ちなみにインターネットでは販売されていないようで、「浜納豆」で検索をかけて出て来るのは中国食材の豆鼓(とうち)ばかりです。